前回もブログからいろいろなご質問をいただきありがとうございました。
その中で、医療のシステム、保険やPhysioの開業診療 (direct access)について少し書きたいと思います。
オーストラリアの理学療法士(フィジオセラピスト)
総数
理学療法士の総数は、日本の10万人超と比較して、オーストラリアでは2万人程度と少ないです。その理由は、養成校のが四年制の大学もしくは大学院で、定員が限られており、かつ、そこへ入るのがとても大変で、全体の上位5パーセントの成績の人でないと入れないと言われています。主に言われているのが、医者、弁護士、会計士、IT関係、そしてphysiotherapist がその中に入ると言われています。
自分の同級生でもphysio卒業後に医学部に進む人も何人かいました。
開業権(Direct Access)
よく今は日本でも騒がれていますが、オーストラリアではもちろん開業権があるため、診断も行い、処方もします。オーストラリアでは、患者さんがDr.を通さずに、直接PTの評価を受け、治療を受けること(direct access )が可能です。
自分のインターンの一つではED (emergency department)では、上肢、下肢などはphysioが最初にみて、レントゲンを処方して、そこから医者と相談して、転移等がなければ松葉杖やギプス、装具なども処方していました。
もちろん転移があったら医師が注射して整復、もしくは手術などは医師の管轄です。
整復の補助はよくしていましまが。
ここで誤解を招きたくないのですが、救急も含め、physioもDrもNsもそれぞれがプロフェッショナルでお互いがお互いを尊重して、対等に物事を話せるという環境だからできるというのがあると思います。なんでも自分ができるという思い込みが怖いと思うのです、自分のできる範囲、できない範囲を理解してなによりもコミュニケーションが大事だと感じていました。
話を戻しますが、その後プライベートのフィジオの受診を勧めたり、パブリックに当てはまる人はそこに紹介、また、違った診断、例えば手のscaphoid fracture は受傷すぐにはレントゲンに出ないので、それがわかる10日後くらいに痛みが引かなければもう一度チェックすることを勧める、そのための紹介状を書くなどをします。
装具やギプスの場合はリスクの説明を行います。この辺の診断がしっかりしないと後で訴訟なんてこともあるようです。

ED (救急)の場合はMedicare という日本の健康保険のようなものを持っていればpublic hospitalでは 無料ですがPrivate では簡単な診察で400-500ドルはかかると思います。
自分の三歳の息子の時も骨折の疑いで行きましたが結局は大丈夫でしたが450ドルくらい払いました。
そこから個人的に任意保険に入っていればその保険会社の契約に伴い40-80%くらいが帰ってくるという仕組みです。
もちろんpublicは、たくさん待ちますし、トリアージもするので救急でも命に別状がなければかなり時間はかかると思います。例えば足首の骨折とかで、脳梗塞や心臓の急患がきたらそちら優先です。なかなか日本で、病院等に勤めていたら関わりにくいかもしれませんが。
Privateはその分待ちは少ないですし、dr も、specialist が多いですが、その分コストがかかるというのが最大のデメリットですね。
ICU 一泊4000ドルとか、もっとかかる場合もあるようですし。
オーストラリアの医療システム
オーストラリアでは、体調が悪くなった場合は、たいてい、まずGP(General Practitioner)と呼ばれる一般開業医を訪れる。まずはGPに電話などで予約をすることが必要です。診察もしくは治療後、必要であれば処方箋を書いてもらい、それを薬局(ChemistあるいはPharmacy)に持って行き薬を買う。GPでは対応できない症状の場合や特別な検査が必要な場合は、専門医(Specialist)への紹介状(Referral letter)をGPに書いてもらい、予約を取って専門医を受診します。
Public のシステムでは基本は医療費は無料もしくは三割くらい。その公共の医療システムはMedicare と言いますが、そらは、医師の診察・検査・治療費などをカバーするが、すべての医療費が全額カバーされるわけではないので、治療や検査によっては差額の支払いが必要となります。また、歯科治療費や鍼治療、メガネ・コンタクトレンズ、救急車、カイロプラクティックなど、適用外も多いです。
ですが、公共の場合、例えば膝のTKR(total knee replacement) なんかは命にそこまで関わらないのだwaiting list に乗せてもらってやるまで何年も待つことになります。
そこでたくさんの人は任意保険というprivate の保険に入って、physiotherapy、膝やほかの手術などを受けて、そこから何割かはカバーされるというシステムです。
Physiotherapy の場合、公立病院で手術をして、physioが必要な場合、最低限は無料で受けることができます。
しかし、骨折して手術して、退院後は4週とか6週後にレントゲンチェックと一緒にエクササイズの確認くらいです。これはあくまで必要最低限で、国のメディケアを使う場合になります。もちろん州によってすこし違いますが、そこでもしそのほかにも必要だったり、頻繁に無理必要があれば自分が働いているようなprivateの開業のクリニックに来ます。Private practice と言いますが、ここはprivateなので基本は患者さんが支払いをします。
例えばappointment で、90ドルかかるとすると、患者さんが持っている任意保険のカードを機械に通して、保険会社によってと、その患者さんが入っているカバーされるもの、physioが年間いくらまでとかによって自動で計算してくれて、60ドルカバーされたらその残りの30ドルをそこでお支払いいただくという感じです。

カードを忘れたり、使えない時は一度払ってもらって後からそのレシートとprovider numberという、自分のphysiotherapist としての登録番号から保険会社に請求できる番号を書いた領収書で請求できるというシステムです。
保険会社と支払う保険料によってカバーされる値段も変わってくるのでよく怪我をしてphysioにかかる人はその分多くかけている人もいます。他にもそれは歯医者は専門医の手術など、日本の任意保険とも一緒で必要なものを組み合わせるという感じだと思います。
これは通常の場合ですが、他にもEPC(enhanced primary care) というシステムがあり、chronic (通常六ヶ月以上)の慢性痛で、GPがphysioを処方した場合、年間に5回までのセッションは無料で行えるというものもあります。
あとは日本でいう労災(work cover)、旅行者の保険での、急性腰痛やほかの怪我などの対応、海軍や、陸軍の保険もあります。
また、自分の大学院のあった首都のAustralian Capital Territory はオーストラリアの中でもいいシステムと言われていて、自分で腰が痛いとかでphysioを受けることもできますが、self referral といって自分で必要だと紹介するみたいな感じですが、自分のインターンのところでは1ヶ月から半年くらい待つ感じです。捻挫とかだと、physioが見る頃にもう治ってそうですが。笑

あとは脳梗塞とかの発症1ヶ月くらい(中には数週もいます)から5ヶ月くらいまでの回復のかなり見込める患者さんは病院内に20ベットで、一日2-4時間以上リハビリができるセンターもありました。自分のインターンでもそこにいましたが、自分は40代の若い患者さんで、子供も小さくモチベーションも高く、色々なエビデンスに基づいて(PhDのスーパーバイザー)の指導で集中的にやるところもありました。公立なので、65-70歳くらいまでの元々の活動レベルが高かったり合併症が少ないなど、入れる制限がありますが。
privateでそういうところでは一日5-10万円かかるので、また任意保険の範囲次第でということになります。
保健に関してはオーストラリアの医療制度はかなりいいと言われていますが、privateとpublicが混在していて自分のような日本しか知らないものからは紛らわしい面もありますが、physioに関しては、リスクもありますが、日々の臨床が本当に勉強になります。
また次回も質問していただいた内容や、大学院の授業の内容など更新できたらと思っています。一部は日本での講習会をさせていただく内容もあるので適度にいく予定です。
それでは読んでくれてありがとうございました。
