先日、日本の大学から海外研修でブリスベンに来ている学生さんたちに、講義をする機会がありました。
日本の夏休みの時期になると、ブリスベンにもさまざまな大学から医療系の学生さんたちが研修に来ています。
理学療法学科だけではなく、看護学科、作業療法学科、臨床検査技師を目指している学生さんなど、大学や学科もさまざまです。
今年も何校かの研修に関わらせていただき、私自身も講義を担当したり、実際にクリニックを見学してもらったりする機会がありました。
こういった仕事をしていると、ときどき、
「最近の大学生ってどうですか?」
と聞かれることがあります。
昔から「最近の若いものは……」とはよく言ったものですが、実際に今の学生さんたちと接していると、僕らの学生時代とは違う能力を持っているなと感じることもたくさんあります。
特に、パソコンやスマートフォン、インターネットなどに関しては、まさにデジタルネイティブです。
資料を探したり、必要な情報を見つけたり、アプリやオンラインツールを使ったりするスピードは本当に速いです。
私たちの世代が時間をかけてやっていたようなことを、あっという間に処理してしまう。
そういう姿を見ていると、「今の若い人は……」と一括りにするのではなく、今の世代には今の世代ならではの強みがあるんだろうなと思います。
そして学校によっても、学生さんたちの雰囲気はかなり違います。
とても積極的に質問してくれる学生さんが多い学校もあれば、比較的おとなしい学校もあります。
もちろん同じ学校の中でも一人ひとり違いますので、「最近の学生はこうだ」と一言でまとめるのはなかなか難しいものです。
そもそも、私自身も決して人のことを偉そうに言えるような大学生ではありませんでした。
一応、真面目な大学生ではあったと思うのですが、授業中に寝ていたこともありますし、パチンコにも行きました。
授業をサボってスノーボードに行ったことも何度もあります。
お酒を飲みすぎて、朝起きたらゴミ箱のそばだった……なんてこともありました(笑)。
今思い返しても特に印象に残っているのが、理学療法士の国家試験の前日です。
普通なら最後の追い込みで勉強をするところだと思うのですが、僕は「少し気分転換をしよう」「ストレス発散をしよう」ということで、友達何人かとパチンコに行きました。
一緒に行った友達の中には、すぐに負けて「これはまずい」と早々に帰った人もいました。
ところが私ともう一人はなぜか残ってしまい、結局、国家試験の前日ギリギリまでパチンコ屋さんにいたという思い出があります(笑)。
そして翌日、そのまま国家試験を受けました。
今考えれば、国家試験の前日に何をやっているんだという話なのですが、それも今となっては学生時代の思い出の一つです。
もちろん、学生さんたちには「国家試験の前日はパチンコに行きましょう」と勧めたいわけではありません(笑)。
むしろ、今こうして大学生の前に立って講義をしていると、当時の自分を知っている人からしたら、
「お前が学生に何を偉そうに話しているんだ」
と言われそうです。

もちろん勉強は大切ですし、大学生のうちにしっかり学ぶことは大事です。
ただ、学生時代に完璧ではなかった私でも、その後いろいろな経験を積みながら、海外に来て仕事をして、今こうして学生さんたちに話をする立場になっています。
そんな話をすることで、
「この人でも何とかなったんだったら、自分も頑張れば何とかなるかもしれない」
くらいに思ってもらえたら、それも一つの意味があるのかなと思っています。
今回の講義では、私がオーストラリアで働いてきた経験をもとに、主にオーストラリアの理学療法士や医療制度について話をしました。

日本とオーストラリアでは、理学療法士になるまでの仕組みもかなり違います。
オーストラリアには、日本のような理学療法士の国家試験がありません。
その代わり、大学の中での評価はかなり厳しいです。
試験や実習などで一定の基準をクリアできなければ普通に単位を落としますし、場合によっては進級できないこともあります。
「国家試験がないなら簡単なのでは?」
と思われることもありますが、個人的にはむしろ大学在学中にかなり厳しく評価されるシステムだと思っています。
そして、オーストラリアの大学を語るうえで大きな違いの一つが学費です。
例えば今年のクイーンズランド大学の理学療法学科では、オーストラリア国内の学生であれば年間の学費はおよそ1万ドル前後。
日本円にすると100万円前後です。
一方で、海外から来るインターナショナル学生の場合は、年間約4万9千ドル。
日本円にすると500万円を超える金額になります。
もちろん為替によって多少変わりますが、それでもかなり大きな差です。
オーストラリアは留学生を非常に多く受け入れている国で、教育は国にとって大きな産業の一つでもあります。
そのため、国内の学生と海外から来る学生では、学費が大きく異なっています。
こういった話は、日本で生活しているとなかなか知る機会がないので、学生さんたちも興味深そうに聞いてくれていました。
私の講義では、学費や資格制度だけではなく、
「オーストラリアで理学療法士として働くにはどうしたらいいのか」
「日本の資格を持っている場合、どのような手続きが必要なのか」
「日本とオーストラリアの医療制度は何が違うのか」
といったことについても話しています。
また、医療英語についても少し実践的な内容を取り入れています。
例えば、実際の患者さんを想定して英語で問診をしてもらいます。
どこが痛いのか。
いつから痛いのか。
どうすると症状が悪化するのか。
どのような仕事をしているのか。
普段どんな運動をしているのか。
そういった情報を英語で聞き取り、そこから患者さんの問題を考えてもらいます。
理学療法士にとって問診は非常に重要です。
英語が完璧でなくても、相手の話を聞きながら必要な情報を集め、そこから何が起きているのかを考えていかなければいけません。
学生さんたちにとっては少し難しい内容かもしれませんが、海外の医療現場を少しでもイメージしてもらえたらと思って行っています。
また、講義の中ではオーストラリアでの生活について質問されることも多いです。
働き方はどうなのか。
医療者の給料はどうなのか。
日本との生活の違いは何なのか。
海外で働くにはどのくらい英語力が必要なのか。
こういった質問が出てくると、私自身も学生だった頃のことを思い出します。
海外で働くことは、実際に経験してみないとなかなか想像しにくいものです。
僕自身も最初からすべて分かっていたわけではありませんし、最初から特別な能力があったわけでもありません。
少しずつ勉強して、失敗して、経験を積みながら今に至っています。
今回も、とても一生懸命話を聞いてくれる学生さんがたくさんいました。
講義が終わった後にも質問をしてくれたり、クリニックの中を興味深そうに見てくれたりする姿を見ると、こちらとしても嬉しくなります。
一方で、当然ですが何人か途中で眠そうになっている学生さんもいます(笑)。
でも、先ほど書いた通り、私自身も学生時代には普通に授業で寝ていましたし、国家試験の前日までパチンコをしていたくらいなので、あまり強いことは言えません。
むしろ、
「どうすれば寝ないくらい面白い授業にできるかな」
というのは、私自身の今後の課題でもあります。
一方的に話をするだけではなく、もう少し参加してもらえる内容にしたり、実際の症例を使ったり、クイズ形式にしたり。
「海外研修に来てよかった」
「この授業はちょっと面白かった」
と思ってもらえるような内容にしていきたいです。
教える立場ではありますが、こうした講義をすることで私自身も毎回勉強になります。
自分にとって当たり前になっているオーストラリアの医療制度について改めて調べたり、日本との違いを整理したりすることで、新しく気づくこともあります。
また、学生さんから思いがけない質問をされて、
「確かに、それはどうなんだろう」
と考えさせられることもあります。
海外研修というと、学生さんが学びに来るものというイメージがありますが、実際には私自身も毎回いろいろなことを学ばせてもらっています。
これからもいくつか講義や研修のお手伝いをする予定があります。
せっかく遠く日本からブリスベンまで来てくれる学生さんたちなので、少しでも何か持ち帰ってもらえるような時間にしたいと思っています。
そして、
「海外で働くのも面白そうだな」
「理学療法士としてこんな働き方もあるんだな」
「今の自分が完璧じゃなくても、これから頑張れば何とかなるかもしれない」
そんなふうに、将来の選択肢を少し広げてもらえたらうれしいです。
私自身も、もう少し眠くならない授業を目指して(笑)、今後も準備していきたいと思います。
ありがとうございました。


