前回は前十字靭帯についての論文を紹介しましたが、今回はスポーツでもかなり多い半月板損傷について自分で書かせてもらった論文も含めて書きたいと思います。
日本臨床スポーツ医学会誌 19巻 4号に掲載して頂きました。

雑誌として特集してもらっていますのでお時間がある方は購入できますので読んでみてください。
(他の先生方の論文も面白くかなり勉強になります)
医療者向けの雑誌です。
話を戻して、
半月板は大腿骨(太腿の骨)と脛骨(すねの骨)の間にある軟骨様の板で内側(Cの形)・外側(Oの形)をして、クッションと安定の役割をしています。
大きく分けると、スポーツなどの急な捻りの動きで損傷する場合、年齢と共に(40歳以降から半月板は変性してくる)起こる損傷があります。
よく医療現場でレントゲンを撮りますが、半月板や靭帯はレントゲンには移りません。
検査にはMRIを使用します。
しかしながら、オーストラリアではMRIは一回300ドル以上しますので、徒手検査によってある程度絞って必要に応じて(先の治療方針と考慮して)オーダーしていきます。
もし心配な方はPhysioに相談してみてください。
特に年齢に伴う変性断裂では、痛みのない人でもMRIで変性断裂がある(大まかに50代以降では50%の人が痛みはなくともMRI上で異常がある)ため、MRIで断裂があっても必ずしも痛みと相関するわけではないので、徒手検査や症状で治療方針を考えていくことが望ましいです。
また変性断裂で手術した例の研究で2年後の結果は手術していない群と同じという報告(手術が悪いのではなく、保存やプラセボ手術と変わらない)という報告もあります。
https://ard.bmj.com/content/77/2/188
半月板損傷で復帰の目安を調べると色々な論文がありますが
Clinical Journal of Sports Medicineという論文のLee 2019らの報告では部分切除は約9週間、縫合では早期の荷重制限や治癒に時間がかかるので5.6ヶ月という報告でした。
一概に早い復帰の方がいいというのもではなく半月板の機能は先ほど述べたとおりクッションと安定なのでとってしまうとその分クッションがなくなるのでその後の変形性関節症等にもつながるので縫合できる怪我(断裂が水平断裂のようにきれいに切れている)では縫合の方が時間はかかっても将来的にはいいという報告も多いです。
私たちの調査では約550例の半月板手術患者の内訳は、内側半月板の手術は30−40代に多く、外側半月板は10−20代に多かったです。
手術の必要な主な症状は、
1、ロッキング(半月板が挟まって膝が伸びたり曲がらなくなる)、
2、キャッチング(関節の中で引っかかる)
3、痛み(歩行時や運動時)
4、水腫(半月板というよりそのすぐ下にある軟骨障害を伴う場合に多い)
手術後はやはり筋力強化が大前提、大腿四頭筋の筋力が反対側と比べて約70%以下の場合は競技復帰に時間がかかったりレベルが下がってしまうことが多いと報告しています。
筋力が70%はBiodexという高価な機械(安いセットでも300万円以上)で測る事が多いですが、そのようなものは多くの場所でないので、
簡易的に
あとはパフォーマンスと徒手検査等で総合的に判断して復帰に向けていきます。
無理して早期に復帰したり、あまりトレーニングをせずに復帰したりすると腫れが取れなかったり、痛みが取れなかったりするので、しっかり復帰へ向けてのプランをドクターやPhysioと相談してもらえるといいと思います。
長々と読んでいただきありがとうございました。

