サッカーに多いハムストリングスの怪我
今これを書いている2025年7月25日現在
オーストラリアのサッカーリーグ、2部以降のカテゴリーは中盤を過ぎて残り1ヶ月となっております。
42歳ではありますが、怪我人が重なったこともあり、今シーズン全公式戦でスタメン出場、打撲とイエローで途中交代した1試合を除いて全て90分のフル出場というキャリアハイに近いシーズンを過ごせておりますが、、
これも妻をはじめ家族のおかげと、毎朝の体幹トレーニングも効いているのかと思います。
(子供達にはコツコツは勝つこつを感じてほしいのですが、、ゲームやYoutubeの集中力を少し勉強等に向けてくれたらと思うパパです笑)
サッカーでは、なかなか安定して結果を出すのが難しいこともありますが、やはりサッカーは難しいからこそ楽しいですね。
私たちのチームの監督は、元オーストラリア代表選手。韓国Kリーグでも4シーズンプレーし、選手としても13年プロとして活躍した有名なセンターバックです。
私は、守備に関してはかなり細かく背が小さいですが、今シーズンは怪我人やフォーメーションでセンターバックで出させてもらうことも多く、
ボールをもらう位置
止める足
相手が2トップか1トップかによってのポジションどり
クロスの守備の体の向き、
背が低くてもヘディングの対応
パス一本一本の意味をもつこと
など、この年でサッカーをまた勉強できています。
いい出会い、いい監督に本当に感謝です。

(190cm 近いFWもごろごろいるのがオーストラリア🇦🇺)
35歳で年下ですが、選手としてしっかりと扱ってくれますし、韓国にいた経験もあって、年上に対してリスペクトを持ちながらも、気さくにいじってくれるのでありがたい存在です。
前置きが長くなりましたが、本題に行きます。
(前置きの近況の話を楽しいと言ってくれるコアなマニアもいるので、しかも論文は最近はA Iですぐに翻訳もできるのでこの近況の前置きは続けたいと思います。笑)
では、
ハムストリング損傷(Hamstring Injury)は、スポーツ現場で最も多く見られる筋肉系のケガの一つです。特にサッカー、陸上競技、ラグビーなどでのスプリント動作中に頻発します。
近年の研究では、回復期間や効果的な理学療法、そして再発予防に関して多くの科学的エビデンスが示されています。
偉そうに書いていますが、自分自身ハムストリングスの痛みにかれこれ2年くらい悩まされています。 歳には勝てないと思いながら歳のせいにはしたくないと論文を読む今日この頃です。
私の好きなBritish Journal of Sports Medicine(イギリススポーツ医学会) の研究から3つの論文を要約しました。
いや、お前治ってないじゃないかというのは受け付けませんので💦

回復期間(British Athleticsの研究)
British Journal of Sports Medicineに掲載されたイギリス陸連(British Athletics)の4年間の研究によると:
- ハムストリング損傷の平均回復期間は約18.6日
- **腱内損傷(BAMIC分類2c・3c)ではより長く、
- 2c:平均約34日
- 3c:平均約48日
🔬 BAMIC分類とMRI画像所見
BAMIC(British Athletics Muscle Injury Classification)は、MRI所見に基づき、筋損傷を細かく分類する国際的な基準で、筋肉損傷をMRI所見に基づいて分類するシステムです。
損傷の程度(Grade 0〜4)と損傷部位(a: 筋膜性、b: 筋腱移行部、c: 腱内)によって分類されます。
British Athletics Muscle Injury Classification
| グレード | 分類の程度 | 主なMRI画像所見 | 予後(目安) |
|---|---|---|---|
| Grade 1 | 軽度 | 筋腱移行部周辺または筋膜に限局的な高信号域あり(線状、短範囲) 構造的損傷なし | 約1〜2週間程度 |
| Grade 2 | 中等度 | 筋腱移行部や腱内に明瞭な高信号域 筋断面積の10〜50%、損傷長5〜15cm程度 | 約3〜6週間 |
| └ 2c | (腱内) | 腱内に軽度の高信号・炎症反応 構造は保たれている | 約3〜6週間 |
| Grade 3 | 重度 | 明らかな筋腱断裂または腱線維の不連続 筋断面積の50%以上、損傷長15cm以上 | 6〜12週間(再発リスク高) |
| └ 3c | (腱内) | 腱内の明確な断裂・波状変形 腱構造が著しく損なわれる | 8週間以上 |
| Grade 4 | 完全断裂 | 腱または筋腱移行部の完全断裂 ギャップ形成あり(収縮により分離) | 手術適応も含めて12週以上 |
🔍 補足
「c」:腱(intratendinous) – 腱の中での構造的損傷(再発・慢性化リスク高)
「a」:筋膜性(myofascial) – 筋肉の表層に近い膜構造に炎症や損傷
「b」:筋腱移行部(myotendinous junction) – 筋肉が腱へと移行する部分
臨床での使い方
- Grade 1〜2b:保存的加療(理学療法)中心
- 2c〜3c:慎重な荷重管理と段階的復帰プロトコルが必要
- Grade 4:手術+長期リハビリの検討
治療法(フィジオ)
エキセントリックトレーニング(伸張性トレーニング)の有効性が注目されています。
早期導入がカギ:
急性期(初日)から収縮を導入したグループでは、
- 競技復帰が有意に早く
- 再発率も低下
PRP注射などの治療法も研究されていますが、現時点では明確な効果を示すエビデンスはなく、ガイドラインでは推奨されていません。

続いて再発予防についての論文です。
NHE(Nordic Hamstring Exercise)は、ハムストリングの再発予防において最も科学的根拠があるトレーニングです。
- 最大70%の損傷予防効果(Petersen 2011 / van Dyk 2019)
- 再発防止効果は最大86%
- 週1〜2回の継続実施で高い効果
- それでもエリートサッカーチームでの導入率はわずか11%
筋肉痛(DOMS)やトレーニング負荷の誤解により、未導入チームが多いのが現状のようです。
ちなみに私の所属するオーストラリア3部相当のHolland Park Hawksでは毎週火曜日の練習前にノルディックを含めたトレーニングを導入しています。(それでもなるじゃねーかというのも受け付けません笑)
臨床現場での応用ポイント
- MRIでBAMIC 2c・3cが疑われる症例では、回復目安を正しく患者に伝える
- 初期段階から収縮そして、エキセントリックトレーニングを導入
- チームにはNHEを年間通して導入する重要性を教育
- PRP治療を希望されることも多いですが、現時点での科学的根拠が乏しい(将来的にはいい研究が出て変わるかもしれないので引き続き勉強しましょう)
というわけで、家族やスタッフに感謝して、残りも全力でやれることをやりたいと思います。

