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サッカーにおける怪我予防プログラム

家族が日本から3ヶ月ぶりに帰ってきて、慌ただしい日々を送っています。

次男も今年から小学校が始まるので、新しい制服を休みの日も着ております。

写真のようにいつも変顔の次男、学校に行けるのか心配です。

オーストラリアは真夏で日々暑いです。

(シティーの人口ビーチ)

今回は真面目に論文のご紹介で、大好きなイギリスのスポーツ医学論文の翻訳です。

11773名の女性サッカー選手16歳以上のアスリート対象の怪我予防プログラムの実際

Making football safer for women: a systematic review and meta-analysis of injury prevention programmes in 11773 female football (soccer) players

『サッカーには怪我がつきもので』とはよく言われますが、

長期的に離脱しなければいけない前十字靭帯損傷等は、選手生命を脅かす大きな怪我となっていて

特に女性アスリートの損傷が多く、私も対応する機械の多い怪我の一つです。

原因は

  • 関節が緩く筋力が男性に比べて少ない
  • ホルモンの関係で靭帯の緩みがある
  • 生理的に外反(膝の角度が内股気味である)

等々、たくさんのことが言われています。

今回はそんなサッカー選手女性アスリートの怪我の状況と予防に関しての論文を訳したいと思います。

この論文は、オーストラリアのスポーツ科学でも有名な、メルボルンにあるLa Trobe大学の論文で、私自身も今までこの大学の論文を参考にさせてもらっていることが多い大学です。

というのも、私はキャンベラ大学大学院を卒業してこちらで働いていますが、

もう一つ応募して合格していたのがのこのLaTrobe大学なんです。

私の学んでいたキャンベラ大学の隣にはAustralian Institute Sports (AIS)という

日本の味の素ナショナルトレーニングセンターを作るのに参考にした場所があり、

キャンベラ大学もプロサッカー、プロバスケット、ラグビーチームを大学が保有しています。

(施設のすぐ裏には野生のカンガルー)

このLaTrobe大学にも大きな敷地にスポーツ施設があります。

今やプレミアリーグの王者Manchester CityやアメリカのNewyork City、そして日本の横浜マリノス等を有するCityグループの一つのメルボルンシティがトレーニングやフィジカルチェックで使っていたりする有数のスポーツ施設なんです。

前置きは長くなりましたが、

サッカーでの怪我のリスクが高いのは皆さんわかると思います。

2023年の7月8月に行われた女子W杯でも技術も戦術もかなり高いですが、

フィジカル面でも数年前よりもどんどん激しくなっている印象を受けました。

サッカーでの怪我の発生率は 

3.42 per 1000 exposure hours(1000時間のプレーで3.42件の怪我)

(馴染みがない方も多いと思いますが、論文の中ではこのように1000時間で何件怪我の発生のリスクがあるというようにして出しています)

一番多いのが

足首で1000時間あたり0.97件 

(去年の自分の捻挫です)

続いて

膝が1000時間あたり0.57件

ハムストリングが1000時間あたり0.22件

股関節やグロインが1000時間あたり0.15件

前十字靭帯が1000時間あたり0.12件

(男子選手の他の論文では1000時間あたり0.076件という報告もあるのでやはり女子の方が約1.6倍リスクが高く、同じ論文ではないので正確に何倍というのは難しいですが、女子の方が多いというのは言えると思います)https://bmjopensem.bmj.com/content/4/1/e000461

トレーニング内容は

神経筋協調エクササイズ(Neuromuscular exercise-based training)

約15分のウォーミングアップでジャンプやバランス等のトレーニングを行います

FIFA 11 のような神経筋協調エクササイズ:この内容は以前の記事にも書いております。どんなエクササイズが忘れてしまった方はこちらの記事を読んでください前編・後編とあります)

(ラダーやジャンプ、バランス系のトレーニング)

エクササイズを取り入れて1-5シーズンの怪我のデータをとって見ていくと、、、

私も昔、あるJリーグクラブの怪我人がどの怪我か、何日、何ヶ月間でフルトレーニングに復帰したか、を4年分調べたことがありました。

私の練習が終わってから、夜11時から夜な夜なパソコンに向かって何ヶ月も調べていて、

だいたいこの怪我はこの位で復帰できている。というのを

他の国のデータと比べて、

『あぁこうなんだ。とか、ここはうちの方が早い。でも、ここは遅いんだ』と、

気づいたら夜中の2時3時になって

「明日のために寝よう」

と、なっていたのが懐かしいです。

(そのデータでスペインマドリッドでの発表、夜なべした甲斐があった)

(レアルマドリッドの本拠地サンチャコベルナベウ)

20代前半からこういう統計の数字が好きだったみたいです。

(カジノのルーレットやスロットでもめちゃめちゃ計算していけると思って大負けていたのが懐かしい。あっ、やっぱり統計ダメでした)

9個のこの様なエクササイズをおこなった研究論文をMeta -Analysisという統計にかけた結果は、

膝の怪我が15%減少

前十字靭帯に限っては45%減少

足首の怪我は17%減少

股関節とグロインは優位差なし

ハムストリング損傷は60%減少

やれば絶対良くなるわけではないですし、怪我はします。

でも少しでもその怪我が減ってくれたらと思って、日々勉強しています。

また、いいと言われることは実際に自分で実践してみて(トレーニングして)

患者さんに伝えるようにしています。

なので、クリニックで会うときは私自身が筋肉痛の時が多いです。笑

そして、どんどんいい論文が出ていますので、しっかり勉強していきたいです。

選手の身体レベルが上がると

より早く、より強く、より戦術度も高い面白いサッカーがハイボールを飲みながら見られるのが楽しみな今日この頃です。

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